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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第15章 しのちゃんの受難(九)
「大学生になってから、別の道のやりたいことを見つけることもあります。そういう友達は、途中で受験をし直したり、編入をしたりして、自分の道へと進んでいます。今の君たちには遠回りに見えるかもしれませんが、遠回りをすることは、別に悪いことではありません」
宗介は外堀を埋めることに心血を注いで、ひたすら遠回りをしてきた人だ。
まぁ、だからこそ、私は逃げ出せないくらいに、彼の術中のハマってしまっていたわけだけれど。
結果がすべてだとは言わないし、努力は必ず実るとも言えないけれど、少なくとも、宗介は、それを実現させようとしている。並々ならぬ忍耐力と執着心で。
「だから、君たちが道を間違えてしまったと思っても、それは必要な回り道だったということです。悪いことではないので、またその場所から新しい道を進んでください」
宗介は佐久間先生へのお礼を述べ、二年生に向けて迷惑をかけたことを詫び、教員職員全員への感謝の言葉を口にした。
そして。
「最後になりましたが――篠宮小夜先生」
「っ!?」
全校生徒、教職員の視線が私に集まる。
いやいやいやいや、まさか、まさかね? 佐久間先生と同じように、感謝の言葉が。言葉を。