この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君がため(教師と教育実習生)《長編》
第15章 しのちゃんの受難(九)
「篠宮小夜先生、ご起立ください」
「……はい」
うわぁ、やらかした! 最後にやらかした! やらかしやがった!
宗介の声に、私はその場に立つ。いたたまれない。
好奇に満ちた視線が痛い。とてもいたたまれない。
なん、なんで、生徒会の子が当然のようにマイクを私に差し出してくるの?
なんで、そんなもの用意してあるの?
なんで、佐久間先生も、梓も、満面の笑みなのっ!?
私、ハメられた!?
「篠宮小夜先生。三週間、ありがとうございました。あなたがいなければ、俺が教師を志すことはありませんでした。それこそ、別の道を歩いていて、この場にはいなかったと思います。俺が今ここにいるのは、あなたのおかげです。本当に、ありがとうございました」
壇上で頭を下げる宗介を見ていると、色んな感情が押し寄せてくる。寂しい。愛しい。恥ずかしい。嬉しい。……つらい。
「俺は学園を卒業するときに、あなたに告白をして、フラれました」
生徒たちが「きゃー!」「わぁ!」と黄色い悲鳴を上げる。講堂内がざわめきに満たされる。
それを「静かに」と宗介が制して――その瞬間に、私の周りが光に包まれる。
スポットライトか何かが当たっているのだと気づいたときには、もう遅い。これは、逃げ出せない。
本当に……外堀を、完璧に埋めたわね、宗介。