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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第16章 しのちゃんの受難(十)
最後、実習生たちは会議室を綺麗に掃除してから、帰っていった。
日々の掃除はしていても、最後に、という実習生は初めてだった。
私が学園で働き始めてから、見たことがなかったから。
それだけ、実習生たちの中に大きな思いが残ったのだろう。
宗介も、さすがに最後の日は実習生たちと一緒に帰っていった。
たぶん、どこかで打ち上げでもするのだろう。三週間、共に切磋琢磨した仲だ。それくらいは、普通のこと。
「家に帰るまでが教育実習です」なんてことを言う教職員は誰もおらず、穏やかな表情で彼らを見送った。
来週から平穏な日々が戻ってくるのだ。
佐久間先生は、今後について一言だけ、アドバイスをしてくれた。
「里見は策士だから、策に溺れないように浮き輪を用意しておいてやれ」
困ったことがあったら手助けをしろ、ということなのだろう。たぶん。
……浮き輪、私には投げてくれなかったくせに、という恨み事は抑えておいた。
私の浮き輪は自分で用意しておかなきゃいけない。
外堀は埋められてしまったから、浮き輪なんて必要ないのだけれど、たぶん、今後は、策にはまって溺れてしまいそうな気がしている。
もちろん、宗介の。