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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第16章 しのちゃんの受難(十)
来週からは少し落ち着くだろうか。
来月には期末試験。夏休み、課外実習や出張があって、二学期には修学旅行や学園祭が待っている。
あぁ、大変だ……。
コーヒーを飲み干して、水切りかごに宗介のカップがあることに気づく。持って帰らなかったのだろう。
また夏休みに来るから、置いておいてもいいかなぁ。一応、聞いてみようかな。
鞄の中にあるスマートフォンを手にして、メッセージに気づく。
『会いたい』
今日部屋に行ってもいいか、という内容だろうかと思って、返事を考えていると、不意にノックの音が響いた。
「っえ!?」
めちゃくちゃビックリして、体がビクッとした瞬間に、マグカップを手から離してしまう。
ガシャン、とマグカップが割れる音とともに、「小夜!?」と慌てた様子で、メッセージの送り主が部屋へ入ってくる。
「そう、すけ?」
「怪我はない? 割れたやつは俺が処理するから。ちりとりとホウキは?」
「……あっち」
粉々には砕けず、いくつかの大きな破片にわかれたマグカップを椅子に座ったまま見下ろして、「何でいるの?」「割れたのは宗介のせいだな」「まぁ、代わりはあるからいいか」とぼんやり思う。
スーツ姿の、昨日と変わらない姿の宗介が、手際よくマグカップを処理しているのを見ながら、視界が歪むのに気づかない。