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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第4章 【回想】里見くんの計画
まず、大塚塾の高村礼二宛に、彼の教育実習が終わった頃を見計らって「椿さんがあなたのことを好きみたいです。彼女はいつも泣いています。一度でいいから、彼女を受け入れてあげてください」と、友人の振りをした封書を送りつけた。
椿への関心を高めてもらうために。
そして、椿には「たか先生に告白してみたら? 絶対うまくいくよ。先生も若い子のほうが好きだよ」と何度も伝え、彼女の欲望を煽った。
その甲斐あって、一ヶ月後に椿から「たか先生と付き合うことになったよ!」と報告されたときには、本気で喜んだ。
本気で嬉しかった。
けれど、俺の計画は失敗に終わった。
結局、小夜さんと高村礼二は別れなかった。高村礼二は、俺の想像以上に、モラルの低い人間だったのだ。
誤算だった。
椿と付き合うために小夜さんを捨てるだろうと思ったら、両者とも仲良く付き合う道を選んだ高村礼二。
俺の辞書の中に「二股」という言葉がなかったがために、こういう結果となった。
何度、小夜さんに「高村礼二は浮気していますよ」と告発文を送ろうとしたことか。
結局、決心がつかずに何もできないまま、時間だけが過ぎていった。