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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第5章 しのちゃんの受難(三)
想像してみる。
親御さんから多少のクレームがあったくらいでは、実習中のバイトの子が呼ばれることはない。
成績が上がらない、カリキュラムが合わない、くらいなら職員が対応するはずだ。
しかし、なるほど、恋愛がらみなら、大変なことになるはずだ。
「親御さんにバレたとか、職員にバレたとか?」
「妊娠させたとか」
里見くんの言葉に、心の奥が冷える。
礼二は確かに、きちんと避妊をするタイプではない。
快楽を優先させる人だ。
さらに、やはり塾生に手を出していたとは、大馬鹿だ。
高校生と避妊もせずに……とは思いたくないけど、彼ならやりかねない。私は彼を信用していない。
けれど、「大丈夫だから」と大人の男に甘い言葉で囁かれて、拒みきれずに受け入れてしまう子がいたら、大変だ。大変なことになる。
「……まさか」
「幸い、付き合っている子は誠南の生徒ではありませんけど」
「なんで、知っているんですか?」
「相手のことは徹底的に調べ上げたいので。だから、昔、言ったじゃないですか。『先生は男を見る目がない』と。相手のことを知らないと、そんなこと言えませんよ」
私、今、ちょっとだけ、里見くんを怖いと思ってしまった。
彼はいつから、徹底的にいろいろ調べていたのだろう。
礼二のことも調べるくらいだから、私のこともきっと……いや、考えないほうがいいのかもしれない。
「まぁ、直接本人に聞けばよいのではありませんか? たぶん、楽しい話は聞けないと思いますが」
「……」
「ほら、ちょうど、いるみたいですし」
「え?」
里見くんが独身寮の前を見つめている。
駐車駐輪スペースの前あたりに人影が見える。
植え込みの前に座り込んでいるようだ。
「礼二……?」
こちらに気づいて顔を上げたその顔は、私の元カレその人だ。