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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第5章 しのちゃんの受難(三)
なんで?
礼二、仕事は?
なんで、ここにいるの?
私を見つけた礼二は、立ち上がって駆け寄ってくる。
いつものスーツ姿ではなく、普段着で。
「小夜っ!」
す、と私の前に立つ里見くん。
礼二との間に割り込む形で、自然に立ちふさがる。
私は里見くんの半分の背中越しに礼二と何日かぶりに再会する。
礼二は頭を掻きむしったのか、髪型がだいぶ崩れている。
ねじったり逆立てたりしてワックスが手放せなかった男が、髪型に無頓着になっている姿を見て、私は嫌な予感しかしない。
「小夜! 誰、この男? 稲垣の次はこの男か? いや、まぁ、この際誰でもいいや」
教育実習生の里見くん、と紹介する暇もなく、礼二は私のほうへ寄ってくる。
手にはスマートフォンしか握られていない。刃物や武器になるようなものはない。
けれど、目だけがギラギラと輝いていて、何だか異様だ。気持ちが悪い。
これは、誰? 本当に礼二なの?