この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君がため(教師と教育実習生)《長編》
第5章 しのちゃんの受難(三)
水谷さんは苦笑している。説得力の欠片もない言葉に苦笑しているのだろう。
智子先生は、酔っているのか醒めたのか、いまいちわからない。
「警察の方なら、付き合う方の身辺調査をするのが普通だと思っていましたけど、違うのですか?」
「違いません。身内に犯罪者がいれば大変なことになりますが、誠南学園の先生なら大丈夫なのではないかと思いまして。あの学園はそういうのは厳しいでしょう?」
鋭い。さすが警部。
私たちは一度も「誠南学園」の名前を出していないのに、よく「先生」だけでわかったなぁ。
「厳しいですね、確かに。でも、性格を知りもしないで、お付き合いとは……」
「成人したら社会人、という智子さんの考え方は賛同できます。納税の義務も果たしているなら、学生でも社会人と定義すべきです。おっしゃる通り、実名報道もされますし、ね」
「二十四歳で警部なら、キャリアさん? 私、子どもは警察官にする予定はありませんけど」
「自分の子どもを産んでくれると? ありがとうございます。ちなみに、子どもの人生に口出しするつもりはありません。間違った道へ進むなら立ちふさがりますが、それ以外は自由に……あぁ、智子さんが誠南学園に入学させたいなら、頑張って稼ぎます」
……あぁ、どうしよう、面白い展開になってきた。