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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第5章 しのちゃんの受難(三)

 私は一人で出し巻き玉子をつつく。甘いダシが美味しい。醤油をつけるとまた違う風味になるのが好きだ。
 イカの明太和えを頬張りながら、ビールを飲む。あー、次は日本酒でもいいなぁ。

「私の家はクリスチャンなので」 
「懇意にしている教会がおありなら、そこで式を挙げましょう。スケジュールを確認したいので、教会の名前を教えてください」
「それと、結婚するまでは処女を守りたいのですが」

 ――なん、何ですって!?
 智子先生、処女!?
 嘘でしょ!?
 経験豊富そうだから、相談していたのに、まさかの未経験!?

 今日一番の衝撃だ。礼二の馬鹿が霞むくらいの衝撃が私を襲う。

 う、嘘だ!
 あのGカップがまだ誰のものでもないなんて!
 いや、まだ誰も到達したことがないなんて!

「構いませんよ。我慢します。それで智子さんが手に入るなら。あ、キスはいいんですよね?」
「……それは、まぁ、構いませんが」
「では、今後ともよろしくお願いいたします。あ、しのさん、智子さんの連絡先を教えてもらってもいいですか?」

 水谷さんが智子先生になぜ頼まないのか、すぐわかる。智子先生は――寝てしまったようだ。
 絡んだ末に眠ってしまうなら、合コンで生き残ることはできないだろう。残念ながら。

 教訓。
 智子先生に、たくさん飲ませてはいけない。

 私と水谷さんは、顔を見合わせ苦笑した。
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