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資料室の恋人
第5章 1年前
大学に常勤の講師として赴任してから3ヶ月が経とうとしていた。
赴任した春、研究室から見えた満開だった桜の木はいつの間にか全て散って、葉が青々と茂り夏を待っていた。3ヶ月が一瞬で去ったように感じる。
佐倉は次の講義の準備をしながら、母校の大学院で助教をしていた頃が懐かしいと思った。助教は講義はしないので、教授や他の先生の手伝いをする事がほとんどだったが、講師になった今では講義を任されている。講義の他に、学生の質問を受けたり、卒業論文の指導をしたり、講演会や学会に出席したりなど、することが山のようにあった。
佐倉は手を止めて背伸びをする。
今日を乗りきれば、明日は土曜日だ。
この仕事には事前の準備が必要なことが多いので、家に持ち帰ることも当たり前のようになっているが、やはり金曜日は嬉しい。苦手な早起きをしなくていいし、職場特有の息苦しさも無い。