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資料室の恋人
第9章 車窓の花火
私だけを見ていて欲しい…
「あ…そっか…」
「え?」
「明里、ありがとう!」
日和は向き直ると、明里をギュッと抱きしめた。
「よ、よくわかんないけど、どういたしまして!」
明里も雰囲気に任せて日和を抱きしめる。
「ありがとう!ごめん、私先帰るね!」
「え?!」
「これ、たこ焼きあげるから!」
「え?!うん、ちょっ!待って日和!」
立ち上がって走り出した日和を慌てて止める明里。
「頑張ってね…!それと、気をつけてね!」
一瞬きょとんとしてから満面の笑みで頷いた日和は、ありがとうと言って走り出した。
「日和どうしたの?」
走り去る日和を振り返りながら直也と航平が明里のもとへ寄ってくる。
「日和はね、群がる女の子たちとの戦いに行った!」
「…は?」
「いーのいーの!たこ焼き食べて花火見よー!!」
「お前は綿あめ食ってからにしろよー」
「ちょっと、直也持っててよ」
「はー?」
明里と直也のやり取りを聞きながら、航平はもう一度振り向いて日和を見る。
人混みに混ざってもうわからない。
「航平先輩もどうぞ!」
直也の声に向き直ると、航平はニヤリと笑って直也の肩に手を乗せた。
「直也も戦わなきゃだよなぁ〜」
「え?」
なになに?どういうこと?と、それぞれ混乱する直也と明里を見て自然と笑みが溢れる航平だった。