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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!


 


 大きなベッドの上、あたし達は久しぶりに真向かいになりながら服を脱ぐ。

「ねぇ、陽菜」
「ん?」

 ぱさりと朱羽の背広が放られた。

「俺、陽菜を不安にさせたんだから、それはしっかりと償いたい」
「別にこうして戻ってきたのなら、それで……」
「駄目。今日は陽菜にずっと奉仕する。それで週末は陽菜の好きなものを買って、好きなものを食べさせてあげる。勿論、これからは毎夜、あなたを愛すしね」

 ネクタイの結び目に手を掛け、首を傾げるようにして斜めに視線を寄越す朱羽の視線が色っぽいこと!
 それだけで、あたしの体は熱く溶けてしまいそうになる。

「いいよ、気にしないで?」
「駄目だって。我儘くらい言えよ、俺はあなたの我儘を受け止められないくらい頼りない?」
「そうじゃないけど……」

 少し痩せたが、ほどよく筋肉がついた逞しい胸板が露になる。
 そこには、彼の手術の痕が浮き出ている。
 彼が頑張って生きた証拠の――。

 あたしが好きな、朱羽の傷だ。

「男はね、甘えられると凄く嬉しいものだよ?」

 あたしが朱羽の体に見惚れて脱衣の手を止めていると、朱羽が笑いながら服を剥ぎ取っていく。

「いじっぱりなあなたも可愛いけれど、素直なあなたも好きだ」

 あたしのすべてをまるごと愛してくれる朱羽。
 それなのにあたしは、どうして疑ってしまったのだろう。

 あたし、馬鹿だ。
 こんなに好きなひとを疑い、手放そうとするなんて。
 
「……陽菜?」

 ほろりと泣いてしまうと、朱羽が不安げな顔であたしの顔を覗き込んでくる。

「朱羽、じゃあ、我儘言ってもいい?」
「うん、言って」
「だったらね……、今夜はあたしが朱羽を愛してもいい?」

 あたしがどれだけ悔いているのか。
 そして、あたしがどれだけ朱羽が好きなのか。

「うん」

 意味するところがわかったようで、朱羽は嬉しそうに微笑んだ。
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