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Oshizuki Building Side Story
第7章 Turning point of love!

Hina side
衣里と杏奈には「冗談言わないでよ~」なんて笑って誤魔化したものの、ふたりと別れた直後、薬局にダッシュ。
そして薬局から出ると、駅のトイレに走る。
薬局で買ったのは妊娠検査薬。
満月で苦しんだ遠い日、何回か買ったことがあったから、使い方はわかっている。
「妊娠してる? してない? どっち!?」
心臓が口から出て来そうなほど緊張しながら、ガン見した結果は――微妙すぎるものだった。
目を懲らせばうっすらと線があるような気もするが、普通に見るとなにも出ていない気もする。
「う……!?」
検査薬によって、あたしはさらなる深淵のダンジョンにでも放り込まれたような心地となった。
「……はっきり出ていないということは、妊娠していないってこと? それとも、検査薬を使う時期が早すぎたということ?」
検査薬に100%の確実性はない。
しかも使うタイミングにも左右されることがあるのも、わかっている。
でも産婦人科へ行くのは、検査薬に結果が出た時にしたい。
産婦人科にはあまりいい思い出はないから……。
……あたしは怖いんだ。
確かに朱羽と、赤ちゃんが出来てもいいからと、合意で避妊なしの情交をしたけれど、この妊娠を契機になにかが変わってしまうような気がして。
忍月財閥の御曹司とあたしとの結婚なんて、普通に考えたって不釣り合いであるのに、そこに妊娠が先で結婚ということになったら、人々は面白おかしく揶揄しないだろうか。
あたしだけならいいけれど、朱羽が言われるのがいやだ。
本人達の事情なんてお構いなしに、『出来ちゃった婚』と割り切られるならまだしも、『御曹司の避妊失敗婚』とか『責任とらされ婚』とか後ろ指さされてしまったら、朱羽だけではなく渉さんやご当主まで、恥をかかせてしまうことになるのではないか――。

