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Oshizuki Building Side Story
第2章 Shooting the moon

「いらないわよ、そんなもの。あんたの愚痴に付き合って、何回も飲みにいったでしょうが。タカる気!?」
「ちげーよ、鹿沼と香月もいる。仲良い奴らで飲みに行こうぜ」
「あんた、また自分の傷を抉る気なの!?」
「傷を抉るって……俺、そこまで自虐的じゃねぇし」
「なのに、なんで!?」
「昨日、香月と飲んだんだ。鹿沼抜かして」
「それで?」
「でまあ、いろいろ考えるところがあったわけよ」
私は大きなため息をついた。
「香月と仲良しやっている以上、あんた失恋から立ち直れないわよ」
「それはどうかな。この先なんて、わからねぇし」
結城は人なつっこい笑みで笑う。
「結城のくせに、私に説教するの!?」
「いや、そうじゃなくてさ。俺の気持ちを一番理解してくれてるのは、鹿沼じゃなくて、お前だろ? だったら親睦深めねぇと」
「はああああ!? いらないわよ、そんなもん」
結城が笑った。
妖しく、ふっと。
「……仲良くしようぜ、衣里」
結城の目がなにかいつもと違う気がして、本能的に恐怖を感じた私は全身鳥肌で叫ぶ。
「勝手に呼び捨てしな「というわけで、真下拉致決定!」」
私は、楽々と結城に腕を掴まれた。
思った以上の男らしい力強さに、どきっとする。
「鹿沼、香月!! 確保成功!!」
……さすがは社長をやるだけあるわ。
どきっとしたなんて、真下衣里、一生の不覚。
ああ、あの時のあたしに言ってやりたい。
どうして抵抗して帰らなかったのかと。
……この後、私は酒に溺れて、どんな忘年会だったのかまったく記憶がなく。
気がついたら――。
「◎▲◇※□!??!??!??」
目の前に結城が寝ていたんだ。

