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Oshizuki Building Side Story
第1章 Shining bright Moon
12月25日――。
帝王ホテルのスイートなるもので宿泊したあたしは、少し前まで朱羽に与えられた……激しくも甘い余韻を引き摺りながら、閉めたままのカーテンの間から漏れる光に向けて、左手を持ち上げた。
きらりと薬指につけたタンザナイトが光る。
「ふふ……」
見る場所の明暗によって、青い石が紫色にも見える不思議な石。
深い青のように見えながら紫でもあり、そして角度によっては緑も混ざって見える。こういうタンザナイトは、カメレオンタンザナイトと言うらしく、希少なのだと朱羽が教えてくれた。
あたしは、指輪をつけて仕事をすることで、爪にひっかかってなにかを傷つけたら嫌だからと、今まで指輪をアクセサリーとして身につけて仕事をすることは敬遠していた。
一度、石のないものをしていったら、結婚指輪と間違えられ、好き勝手な揶揄に散々な目にあったことがある。一人歩きする噂をいちいち否定するのも面倒だからつけていくことをやめたくらい、指輪に特別に関心はなかった。
そのくせ、朱羽から貰った小箱から指輪が出てきた時、すごく嬉しくてじーんとしたものが胸に込み上げてきたんだ。
ネックレスも嬉しかったけれど、指輪はさらに特別な気がして。
その石がなんであるのかは別に気にはしないけれど、朱羽がダイヤの指輪を後で……と言われた時、ダイヤの指輪にも意味があるのかと馬鹿みたいに思ったくらいだ。
それくらい、朱羽から指輪というものを貰った時の特別感は半端なく、そして朱羽が選んでくれたこの指輪のデザインも、あたしにはどんぴしゃで、宝物のひとつとなった。
緩やかなうねりがあるような細身のプラチナアームに、高さが違う端と端の間に、プリンセスカットと呼ばれる正方形がひし形になるように配置されたタンザナイトの指輪。
出来るだけ爪がひっかからないように、そして可愛すぎずシンプル過ぎずといろいろ見ていたために、店でかなりの時間を費やしていたらしい。
そしてこの指輪は、あたしの薬指にぴったりだった。