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Oshizuki Building Side Story
第2章 Shooting the moon
 


「あたしは結城と身体の関係をもつことで、ひととしての精神を保てたの。友達でセックスをしていたけど、あたしはセフレという言葉は使いたくなかった。結城はそんな軽々しい男ではないから」

「……っ」

 そう。結城は軽々しい男ではないのに、私を軽々しく扱ったことがショックで。

「セックスから始まる恋、あってもいいんじゃない? それもひとつの恋愛の形だと、あたしは思うけど」

 どくんと心臓が鳴る。

「でも、私は雅さんが……っ」

 どうしてもそこが振り切れない。

「衣里が会長を愛した事実は変わらないよ? それは結城もわかってるし。衣里が、結城はあたしを好きだったということを知っているように、それは記憶からは抹消出来るものではない。あたしがこんなことを言うのもなんだけれど、わかっている付き合い方、できない?」

「……っ」

「今まで、会長以外誰にも心が揺れなかった衣里が、結城と寝たことで心を乱されている。ねぇ、衣里。衣里が本当にショックだったのは、結城と寝たことを衣里が記憶がないからじゃないの?」

「え……」

「結城との一夜を、衣里は覚えていたかったんじゃないの?」

「私は……っ」

「衣里は、結城と関係を持つことで、あたしのことは思い出さなかった?」

 私は、びくっとした。

「あたしとも寝ていたんだから、自分もセフレにされるんじゃないかとか、思わなかった?」

 私は――、


「それは、嫉妬じゃない? 衣里は結城にとって一番であって欲しかったんだよ。衣里が、結城のことを特別に思っているように」


 項垂れた。


「衣里。身体から始まったことで、友達の一線を越えた。衣里があたしみたいに、結城を友達としてしか思えないか、男として好きになるのかは衣里次第。これから、じゃない? なにも今、答えを出そうとしなくてもいいんだよ?」

「陽菜……」
 
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