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Oshizuki Building Side Story
第2章 Shooting the moon

「確かめてみればいいんだよ。結城に対するのが、同情から生まれた親近感なのか、それとも女として意識しているものなのか」
「でも、結城は……陽菜を好きなのに。陽菜だって複雑……」
すると陽菜はからからと笑った。
「あたしは、結城に幸せになって貰いたいの。あたしのために結城は、自分の幸せを見つけようとしてこなかったから。その結城が動こうとするのなら、あたしは喜んで応援するよ」
「う、動こう?」
「結城はモテるけど、誰彼構わず寝るような男じゃないよ? それは衣里も見てきたでしょう?」
「う、うん……」
「結城が衣里を抱いたのは、結城も酔っていたからだと思う? それとも、衣里が酔っていたからだと思う? ……結城は、男の欲で動く奴じゃない。そんな男なら、きっとあたしは朱羽と付き合っていなかったと思う」
「でも、同意はなかったんだよ?」
「あったのだとしたら?」
「え?」
「衣里は、結城がなんで衣里を抱いたのか確かめたの?」
「そ、それは……」
私は一方的に怒って出てきてしまっただけだ。
「もっと、結城と話す必要があると思わない? 衣里もまた、新しい未来に向けて戦おうよ。会長を好きでもいい。だけどそれで人生終えようとしないで、もっと上を見て。積極的に幸せを見つけようとしてもいいんじゃない? あたしみたいにさ」
陽菜は大人びた顔で笑う。
雅さんが好きで、だけど想いは叶わなくて。
……好きだというその心を丸ごと抱きしめて貰えたのなら、私も陽菜みたいに……前を向いて歩いてもいいのかな。
報われなかった恋に自棄になったり悲観するのではなく。
……その相手が結城だというのがまた微妙だけれど、だけど確かに結城は、相手の嫌がることはしない、良い奴だから。
「考えてみる。私は結城が好きなのか。結城と未来を進みたいと思うのか」
「うんうん、その調子!」
逃げるのではなく、下を見るのではなく。
陽菜に押された私の背中が、なんだかこそばゆかった。

