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Oshizuki Building Side Story
第2章 Shooting the moon

「逃げてねぇなら、誘ってる?」
「違うわ!」
「違うなら、話聞け」
「嫌」
……ああ、なんで私の口からは可愛くない言葉ばかり。
「真下!」
真面目な顔をした結城が怖い。
いつもの笑顔がないだけで、心が落ち着かない。
「うるさいわね、出て行け!」
その時、
「真下!」
腕を引かれた私は、スーツ姿の結城の身体の中に収った。
「逃げるな」
「離せ」
「離さねぇ」
「結城!」
睨み付けた私の顔に、結城が近づいてきて――
「!!!!」
唇が、重なった。
……それが深いものになった瞬間、私の中で何かが弾けた。
「やぁ、やだったら、や……んんっ」
私のものとは考えられないような甘ったるい声が、止まらない。
結城が。
あの馬鹿ばっかりしている結城が。
私を女として、キスをしている――。
「んん、んんんっ」
結城を押し返そうとする私の両手首を握り、壁に私を押しつけるようにして、荒々しいキスを続けてくる。
やがて……。
「んん、ん……っ」
「馬鹿っ、鼻で息をしろ、息っ!! 昨日、教えただろう!?」
そんなこと言ったって、私は初めてなのだ。
こんな、舌が絡んだキスは。
……こんな、気持ちいいキスは。
ぜぇぜぇはぁはぁとまるで、格闘でもしていたかのような息づかいが、やがて整ってきた時――。
現実を認識した私の身体は、羞恥にカッと熱くなった。
「……なにするのよ……」
消え入りそうな弱々しい声。
顔が火を噴きそうなほどに熱い。
それを結城は見る。
見られてまた私は赤くなる。
「昨日も思ったけど、お前さ……」
結城に笑われる。
29歳にもなってキスもしたことないのかと。
「いつもツンツンしてるのに、デレた時の可愛さ、やばいから」

