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Oshizuki Building Side Story
第3章 praying for Moon

「そんなに照れないの。止まらなくなるだろう?」
コトリとテーブルにカップが戻される音がしたと同時に、腕を引かれて、唇が再び重なった。
珈琲の味がする――。
朱羽の大きな手のひらが、あたしの頬を優しく撫でながらも、リップ音をたてて何度も触れるだけですまなくなったキスは、段々と深くなり官能的な声が漏れる。
「は……」
湿った音をたてて唇が離れれば、不意に視線が絡む。
気持ちいいと声を漏らしてしまったのが妙に気恥ずかしくて、思わず目をそらしたら、軽く鼻の頭を噛まれて、頬にもちゅっと熱い唇の感触。
「……ここで一緒に年を越して、元旦の"姫始め"から今日まで、バニラにも会わずに、あんなに愛し合ったのにさ。キス以上の濃厚なこともしてきたじゃないか」
「っ」
身体を持ち上げられ、後ろ向きに朱羽のお膝の上。
ぎゅっと抱きしめられ、後ろから肩に顔を埋められ、時折あたしの頬に朱羽の頬を擦りつけられて。
朱羽の匂いにくらくらしながら、朱羽にもたれかかってしまうと、また唇が重なった。
「俺、どれだけあなたに惚れ込んでいるんだろうね」
「……っ」
「あなたの匂いと感触にたまらなくなる」
ぞくぞくとした甘い声を耳元で囁きながら、朱羽の指が、あたしの左手の薬指につけた指輪のタンザナイトを撫でる。
「あなたを縛ったつもりで、俺がさらにあなたに縛られた気がする」
耳を軽く食まれ、思わず身震いしてしまう。
「……こんなに俺は一途なのに、あなたはスマホでなにをしてたのかな?」
いつの間にか、朱羽の片手にあたしのスマホ。
「……厄年早見表?」

