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Oshizuki Building Side Story
第3章 praying for Moon
  


 幾度目の厄祓いだっただろうか。

 神主が祝詞を上げて、心願を口にした時だ。

 同じ厄祓いになんと杏奈の名前が呼ばれたのだ。同姓同名かとも思ったが、年齢と住所は恐らく杏奈本人に間違いない。

 この大勢の祈祷者の中でどこにいるのかわからないが、それでもややしばらくしてから朱羽の名前も呼ばれたことに、彼女も気づいたはずだ。

「へぇ……偶然って凄いね」

 杏奈も杏奈なりに厄祓いについて思うところがあったのだろうか。

 どこらへんに杏奈はいるのだろう。
 帰りは会えるのかな。

 そう思っていたあたしの耳に、復縁成就と呼ばれた中でなんと「ムコウジマソウジ」の名前が呼ばれたことに驚き、開いた口が塞がらなかった。

 え、杏奈と来ているの?
 それとも偶然?

 同姓同名?

「次に、恋愛成就を願うのは……」

 そして呼ばれたのが、「キジマタケシ」

 名前を呼ばれたときに「おっす」という声が聞こえたから、木島くんに間違いないのだろう。なぜ、元ラグビー部マネージャーが「押忍」なのかはわからないが、彼なりに向島専務への威嚇なのかもしれない。

 それでも……有名な神社とはいえ、知り合いが三人も集うなんて。
 
「ここは縁結びの神社でもあるからね」

 朱羽が小声でそう教えてくれたけれど、いくら縁結びをしてくれるからといって、復縁と恋愛成就を願うふたりの男と杏奈が、晴れて結ばれるわけはないだろう。どちらか、もしかするとどちらも結ばれない、か。

 正月早々恋愛を考えていたふたりとは違い、杏奈は厄祓い。
 もしかすると会社のために来たのかもしれない。

 温度差を感じて笑い声が漏れそうになる。

 切実なのか、男ふたりは。鉢合わせするほどに。

 最後は榊の葉っぱを神殿に備えて終わるが、神主に名前を呼ばれて榊を献上するため、名前によって歩み出た三人を注視していたが、やはり三人は三人。どう見ても本人のようだ。

 祈祷が終わると、杏奈が出口で待っていてくれた。

 杏奈は着物、藤色の振り袖姿だ。

 髪をまとめ上げて簪をさし、首には白いモコモコを巻いた杏奈は、どこぞのモデルかと思うほど綺麗で。

「鹿沼ちゃん、香月ちゃん。ちーす!」

 ……その挨拶がなければ。
 
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