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Oshizuki Building Side Story
第3章 praying for Moon

「神様は、どっちを応援しているんだろうね……」
小さくなってもまだ声が聞こえてくる。
「あの専務、開き直ってきたよな」
朱羽が忌々しそうにぼやく。
「でもカドが取れてきたから、よかったんじゃない? 渉さんとも飲みに行ってるんでしょう?」
「まあね。あのふたりは、本当に仲が良かったから……。昔のような渉さんの笑顔を見れたのは、ある意味……専務を開き直らせた木島くんのおかげもあるかもしれないな」
……木島くんも脇にいない人間で、やがて次代シークレットムーンを背負っていくのだろう。
いつもしゅうしゅうとしているが、デザイン力だけではなく統率力もついてきた木島くんは、結城とまた違った形だけれど、皆をまとめあげている。
「木島くんが、社長になることも夢じゃないか」
「はは。辛い時期のシークレットムーンを見てくれているから、辛いムーン時代を見てくれた結城さんのように、会社を守ろうと奮起してくれるかもね」
「言いたい放題で怖い物知らずのあの感じなら、木島くん、向島専務と仲良くやっていけそうだし」
あたし達は笑いながら境内を歩いて行く。
「結構あちこち回ったね。厄祓っただけではなく、色々なお札やお守り買ったから、俺、無敵になりそう」
「はは。朱羽が無敵になったらどうするの。既に無敵なのに」
「あはは……ってあれ?」
朱羽が足を止めて、鳥居を潜って入って来たカップルを見た。
「え? あれ?」
それと結城と、和装をした衣里だった。
「なんで私が、あんたと一緒に縁結びの神社に来ないといけないのよ!」
「その割には、着物なんて気合い入っていねぇか?」
「私はお嬢様だったの! 元旦に着物は常識の真下の家に来たくせに、あんたわかってないの!?」
「ああ、お前をくれって言った時のこと?」
「あんたね、言い方がいやらしい……ひ、ひひひひ」
「なんだよ、変な笑い方して。って、かかかかかか、ここここここ」
あたしと朱羽が立って見ていたのに気づいたふたりは、なにやら突然奇声をあげてにぎくしゃくし始めた。

