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Oshizuki Building Side Story
第5章 Coloring in a moon

あのCMは、音楽もとてもよかった。
しかしとても嫌な予感がして、音楽はどこで誰が作ったものかなど情報の一切をシャットアウトしたけれど、その話を後日渉さんにしたら、かなり爆笑して俺の頭を撫でてくれたっけ。
そしてモデルの愛おしむような、だけど激情を秘めた眼差しは、同性ながらくるものがあった。
そんなモデルの名前は――。
「ああ、覚えてる。陽菜と衣里さんが、TATSUMIが復活したって騒いでいた」
正直言えば、騒いでいたのは面白くなかった。
俺が陽菜を想いながら海外に居た頃、国内で一躍有名となっていたにも関わらずに、突如引退したというトップモデルの話を、上気した顔でされても。
彼は、俺と似た年齢にもかかわらず、支配者的な貫禄が合ったから。
俺にはない部分を、陽菜が求めているようで。
――青春時代に周りがキャーキャー言っていたTATSUMI様だもの、ファンじゃなくとも懐かしく思うのよ。
陽菜も衣里さんも、青春の一頁として今騒いだだけらしいけれど、他の男が陽菜の心に今も刻まれていると思えば、妬けてきたものだ。
「そのアムネシアが、次なる新シリーズの広告相手として、喜多見響と手を組むみたい。メインデザインは喜多見響ではなく、彼が絶賛する女性デザイナーらしいんだけれど。アムネシア側からのオファーで、喜多見響もついてくる、みたいな」
「誰情報?」
「結城。前に加賀社長と飲んだ時に、喜多見響がいるアラウドデザイン事務所に広告の仕事を持って行かれるとぼやいていたんだって」
また、陽菜から出てくる他の男。
やはり、陽菜から出る結城さんの名前に、俺は身構えてしまう。
結城さんに対して打ち解けた今でさえ。
「まあ、結局……アムネシア側としては、デジタル編集出来るうちがバックにいる……モデルを確保出来るAACと、デザイン力があるアラウドを組ませようとする魂胆みたいだけど。喜多見響って本人もとってもイケメンだけど、めっちゃ格好いいポスター作るの。胸にずんとくる、迫力あるデザインで。前に雑誌で特集されていたのを買っちゃったくらいよ。今度見せてあげるね」
俺は、他の男を褒める可愛らしいピンク色の唇を奪う。

