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Oshizuki Building Side Story
第5章 Coloring in a moon

……普通に考えて俺の愛は重いのは自覚している。
だからこそ、愛想を尽かされないようにしなきゃいけないのだけれど、それでも日々美しい女となる陽菜を見ていると、俺は取り残されていくのではないかと、妙に不安になる。
さらには、陽菜と同い年の同期の団結が強すぎて、思った以上に三歳という年の差は俺にダメージを与えてくる。
あの中に、俺がいてはいけないような錯覚に囚われるから。
……どんなに、あの場に立ちたいと思っても、実際呼ばれて立っても、三年の時間は縮まらないのは、もどかしい苦しみだ。
「ああ、イルカちゃん、可愛かったね~。可愛い鳴声が耳から離れないや」
手を繋いで、色とりどりのLEDで照らされた水槽を両側にして歩いて行く。
「確かに可愛かったけど、俺、もっと可愛いものいつも見ているから」
「え?」
「愛でれば愛でるほどに、世界で一番可愛い声で啼くし?」
すると陽菜は真っ赤な顔で、ポカポカと俺を叩いた。
本当に陽菜はわかっていない。
俺がどんなにあなたを溺愛しているのか。
「うおー、朱羽。水族館にカワウソがいる!」
陽菜があるコーナーから離れなくなった。
そこにいるのは、一匹のカワウソ。
陽菜になにかを訴えているかのように。
見つめられた陽菜もなにかを返しているかのように。
1人と1匹の世界がそこにはある。
横から覗き込むと、そのカワウソが睨んできた気がした。
あれはオス?
まさか陽菜に発情しているとか?
俺は後ろから陽菜を抱きしめ、カワウソを睨んで見せつける。
陽菜は俺のものだ。
俺の方がお前より陽菜が好きで、欲情し続けている。
するとカワウソは、怯えたようにして去っていった。
「あ~、行っちゃった。どうしたんだろう……」
「どうしたんだろうね?」
俺は陽菜ににっこりと微笑んだ。
……カワウソに嫉妬して見せつけて勝ったなど、口に出せやしない。

