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Oshizuki Building Side Story
第5章 Coloring in a moon
 

「幻想的なクラゲだね~」

 浮遊する半透明なクラゲに、LEDが当てられ、様々な色に変化しているように見える。
 それは神秘的な空間だった。

 あちこち、影でカップ目達が抱き合ったり、キスをしあったりしている。
 水族館は鑑賞というよりも、ムードを高め合う場所らしい。

 ……指を絡ませる手の繋ぎ方に変えて、繋いだ手を持ち上げてキスしていた俺には、そうなる状況がわからないでもない。
 むしろ、煽られる。

 周囲の動きと、微かに聞こえる喘ぎ声に気づいたらしい陽菜の目が泳ぎ始めた。

「い、行こうか」

 わかりやすいな。
 だから俺は、知らないふりをして意地悪をする。

「もっと見ていこう? こんなに綺麗なクラゲ、俺も初めてだし」
「ん……だ、だったら場所を変えない? あっち行こうよ」

 俺の手を引いたところでは、カップルが抱き合いもぞもぞと動きながら、キスとは違う湿った音を響かせている。

 よりによって、そっちに行くのか。

 気づいていない陽菜は、その近くで立ち止まり、水槽のクラゲを見る。

「ここならいいの?」
「うん、ここなら……」

 陽菜がほっとしたような声を出した時だった。

「あ……んっ、そこ……ああ……」

 途端に、声を潜めながらも響く女の嬌声に、陽菜はぎょっとしたようで。
 そんな彼女が可愛くて、腰を引き寄せると首筋に顔を寄せて、舌を這わせる。

「あ、朱羽……」
「ん?」

 陽菜の声も、上擦って甘い。
 煽られたようだ。
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