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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!

途端に渉さんは頭を抱えた。
「なにから突っ込んでいいかわからねぇ……」
「同感です。だけど朱羽はきっと、サムライガールと接吻を交わしたのかもと……」
「……お前、寒くなる言い方はよせ。その本文からは、ガールかどうかわからないじゃねぇか。中を見たということか?」
あたしは眉を顰め、神妙な顔で言う。
「中を覗く度胸はないですよ。ただ登録されていた名前が『ひまりん♡』だったんです。どう考えても、男の名前じゃないなと」
「仮に男の名前だとしても、またそれはそれで大問題だな」
「はい……」
「キャバ嬢とか水商売系? あんな口調で接客されて、あの朱羽が通うか……?」
ぶつぶつと独りごちていた渉さんは、困惑に満ちた表情をしてやがて絶句するが、頭を一振りして尋ねる。
「でもよ、お前ら結婚の話は進んでいるんだろう?」
「……」
「なんだよ、その無言。その指輪を贈ったの朱羽だろう?」
渉さんは、あたしが左手の薬指にしているタンザナイトの指輪を顎で促したが、あたしはぼそぼと答えた。
「……今思えば、当時誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントを兼ねてのものだったし、婚約指輪というには婚約まがいのことはしていないし。正直、結婚もまだちょっと……」
「はああああ!? あの朱羽をすぐに婿にしたくない理由はなんだよ! お前ら既に同棲してるんだろう!?」
思った以上に渉さんは驚き、そして憤る。
「結婚したいかしたくないかと言われれば、したいですが。でもその時期ではないと」
あたしは若干及び腰になって言う。
「それ、毎週本家で資料を暗記するほど頑張って、周辺整理をマッハの勢いでしようとしている朱羽に言ったのか!?」
あたしはその剣幕に押されながら、こくりと頷いた。
そしてふと思う。
「……考えてみたら、それからです。朱羽が浮気をしたのは」

