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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!

「やだよ……」

 ぼたぼたと涙がこぼれ落ちる。

「別れたくないよ、朱羽……っ」

 あたしが初めてこのマンションに来たのは、熱を出した朱羽を看病をした時だった。

 熱で色気を強めさせて迫る彼にドキドキしながら、惹かれていったあの時を思い出す。

 あたしの中で熱は消えることはないというのに、朱羽からは消えたと思うと、苦しくて苦しくて、あたしは心臓をどんどんと拳で叩きながら、天井を見上げて泣いた。

「朱羽――っ!!」

 ……朱羽を喪いたくないという女のあたしが慟哭する。

 でも、どこかでわかっていたはずではなかったのか。
 この幸せな物語は、朱羽の愛があってこそのものだと。
 朱羽から愛がなくなれば、あたしの幸せは終わるのだと。

 だけどあたしは、この幸せは永遠に続くのだと、朱羽はあたしを捨てないと、そうあまりにも信じすぎていた――。

 なによりあたしは年上で。
 朱羽を縛る要素などなにもないのに、それでも死ぬまで朱羽の隣に立っていられると、そんな傲慢なことを確信し始めたのはいつ頃か。

 忌まわしき満月が引き合わせた相手だから。
 ブルームーンに願いを込めたから。

 所詮は、自己満足にしかすぎないのに。

「朱羽……」

 笑う朱羽。
 拗ねる朱羽。
 泣く朱羽。

「朱羽……っ」

 あたしには、どれもが愛おしくてたまらないのに、でも朱羽は違うの?

 朱羽が永遠を誓いたい相手は、他にいる。 
 あたしと朱羽は、運命の出会いなんかじゃなかった――。

 辛くてたまらない。
 朱羽に決定的な言葉を貰い、これからの人生から朱羽がいなくなると思ったら、半身がちぎれそうに痛すぎて。
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