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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!

『あのさ、お前まさかカバに別れたいとか言い出すんじゃねぇよな?』
「あるわけないじゃないか! 俺がどれほど陽菜に恋をしてきたのか、今の自由の身で陽菜の傍で生きられるこの幸せをどれほど失いたくないのか、渉さんにはわかっていなかったのか!?」
『いや、それならいい。そう、カバに言ってやれ。それと、LINEしているサムライガールと手を切れ』
「俺は遊んでないよ。個人的にLINEしている女なんていないから」
『あのなあ。なにを隠したいのか知らねぇけど、本当にお前が潔白だというのなら、幸せボケしすぎて、お前は現実を理解出来ていねぇよ。今、カバとの危機だという自覚もねぇんだろうが!』
「危機!?」
そこまでのものとは、思ってもみなかった。
え、いつから?
え、どうして?
『いいか、カバは沙紀みたいに、千切っては投げるタイプじゃねえんだぞ。しかも恋愛慣れしてねぇ。さらに人のことに際しては強いが、自分のこととなると……』
「渉さん」
俺は渉さんの言葉を遮った。
「心配してくれるのはありがたいけど……、陽菜のことは俺が一番にわかっているから」
段々と声が低くなってしまう。
本当に俺は、陽菜に関してだと、心が狭くなる。
渉さんですら、陽菜を一番に理解しているような言葉は聞きたくない。
危機だというのなら余計、俺がなんとかしないといけない。
すると渉さんはひとつため息をついてから、言った。
『今夜カバとの誤解を解いて、カバを抱き潰せよ?』
「……渉さんに言われなくてもそうするつもり。じゃあ切るから」
……俺だって、陽菜に触れないのはもう限界だ。
片想いの時より、なまじ彼女のすべてを知ってしまっているだけに、襲いかかる彼女の乱れた幻影が俺を苛ませていた。
抱きたくて仕方がないのに、抱けなかった愛おしすぎるひと。
「香月さん、お待たせしました」
俺は電話を切る。
可愛らしい声が俺の名前を呼ぶが、俺は比べものにならないほど愛らしくて胸が熱くなる声を知っているから。

