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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!
 
「桐嶋さん、今日でもう大丈夫だと思うので、ひとまずこれにて」
「はい、大変お世話になりました。後埜総帥、凄く厳格でやりにくかったんじゃありませんか? おまけに夜も皆で飲みにつれていかれて」
「ははは、大丈夫です。総帥が見えられた時はいつも来て下さった〝彼〟のおかげで、風当たりは来ませんでしたし。色々とお気遣い頂き、逆にこちらこそご迷惑をおかけしたのでは?」
「いえいえ、とんでもないです。香月課長はこちら事情に巻き込まれただけなので、本当に申し訳なかったです。そう、師匠も言っておりました」
「へぇ、珍しい」
「ふふふ、本当に珍しいです。そんな殊勝なことを言うなんて。よっぽど香月課長になにかを感じたんでしょうね」

 彼女は口を手で抑え、どこか育ちのよさを思わせる上品な笑い方をする。
 左手の薬指にある、ダイヤの指輪を煌めかせて。

「ところで彼は……? 一言、ご挨拶を……」
「実は急な呼び出しが入ってしまって。それなので申し訳ないとの言付けと共に、これを渡すようにと」

 手渡されたのは大きな封筒。
 中にあったのは――。

「はは……これは凄い。素晴らしいものをありがとうございましたとお伝え下さい」

 不覚にも泣けてきて、それを悟られないようにと俺は無理矢理に笑った。
 彼女は穏やかな笑みを向けて言う。

「香月課長。彼女さんを喜ばせてあげて下さいね。師匠はああ言いましたけれど、女としては……結婚に誠実さを見せて貰うよりは、常に愛を感じさせて貰った方が、安心出来ると思うので」
「……はい、わかりました」

 俺と大して年齢は違わないはずなのに、彼女はしっかりとしている。

「それと……〝あの件〟は本当に失礼致しました! 羽目を外しすぎて、そしてあのLINE、師匠に思いきり笑われ……いえ、怒られました」

 だが、どこか抜けているところもあり、そういうところが〝彼〟のお気に入りのひとつなのだろう。
 まあ〝彼〟がどんなに牽制したところで、俺は陽菜しか見えないけれど。
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