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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!
 

 Hina side


 一旦、今月まで契約だった自分のマンションに戻ってきたけれど、この部屋も朱羽の思い出が強すぎて、居ることが出来なかった。

 だからあたしは、満月が照らし出す夜の東京をふらふらと歩いた。

 行く当てなどない。
 結城や衣里など、思い浮かぶすべてのひとに頼りたくても、そのすべてが朱羽と繋がっているから、電話をすることも出来ずに電源を切ったまま。

 あたしはこれからどうすればいいだろう。

 あれほどシークレットムーンに愛を注いできたのに、今は公私混同甚だしく、会社に行くのが嫌だ。

 結城と衣里と、そして杏奈達と、絶対シークレットムーンを盛り立てようって誓ったはずなのに。

 あたしの日常に、朱羽は色濃く刻まれすぎていた。

「明日からどうしよう……」

 それでも考えるのにもう疲れて。

 とりあえずは今夜、ネットカフェに泊まって、徹夜で漫画とか映画を見ていよう。なにも考えずにすむように。

「どこにあるっけ……」

 いざ歩いてみると、店が見当たらない。
 いつもは目に入っていたのに、今は認識すら難しくて。

 じわりと涙がこぼれ落ち、あたしは雑踏の中立ち止まって嗚咽を漏らした。

 あたしは、どこに行けばいい?

 心ごと迷子のあたしは、途方に暮れる。

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