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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!

 やがて、ようやく通じたらしい。

「もしもし、私シークレットムーンの香月と申しますが。ええ、先ほどはキリシマさんよりポスターを預かりまして。素晴らしいものをありがとうございました」

 ポスター?

「それで申し訳ないのですが、今一度あなたの名前と会社と素性を大きな声で言って貰えませんでしょうか。完全にプライベートのもので……あ、はい。そうです。あなたのアドバイスを実行した結果、私が惚気た相手が一方的にあなたと浮気していると修羅場にしてくれているもので、私の人生を賭けている最中です。今スピーカーにしますので!」

 そうして朱羽がスピーカーにしたスマホは、大音量を流した。

『あははははは……だからあんたは生真面目過ぎるって言ったじゃねぇか。ああ、そこに香月課長と一緒にいると思われる彼女さん』

 それは艶ある男の声で。

「は、はい!」

 あたしは思わず畏まって返事をしてしまう。

『そちらの課長さん、ただでひとを働かせようとするから、代わりに仕事をさせていたんだわ。で毎晩飲まされるクライアントに酔い潰れて、あんたが結婚してくれないとぼやくからさ』
「そんな情報いりません!」

 朱羽が怒鳴るが、それでも電話の主は続ける。

『そんな情報がないから、俺と浮気なんていう発想になるんだ。まあそんなんで、俺なりに色々アドバイスして、〝サルみたいに盛っているなら、改めろ〟と言ったわけさ。きっと真面目な課長さんのこと、一切手出ししてこなかっただろ?』
「は、はい……」

 その通りでございます……。

 朱羽は、夜目にもはっきるわかるほど真っ赤な顔で、聞かされる屈辱にふるふると震えている。
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