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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!
「いやいや、でもどうして彼と仕事……!」
「……10日前、陽菜が行けないからと俺が打ち合わせに行った時、ちょうど彼が居合わせて。向こうの担当者に、喜多見響だと耳打ちされてね」
なんという素晴らしい偶然!
やっぱりあたしが行けばよかった!
「……それで、打ち合わせが終わった時に、ちょうど彼も帰るところだったから、思い切って声をかけてみたんだ。その……ポスターが欲しいって」
朱羽はぼそぼそと言う。
「ポスター? 朱羽、ファンだったっけ?」
あれ、でも前の時、彼のことを知らなかったような。
「俺じゃなく、陽菜が喜んでくれたらなと……」
朱羽は拗ねたようにして言う。
「あ、あたしのため!?」
「……ん。陽菜が好きだと言ってたから」
こくりと、朱羽は頷いた。
「だけど彼……」
――ははは。面白い冗談を言うひとだ。あなたと僕は全く面識がない。そのあなたに不躾に頼まれて、忙しい最中にポスターを作る義理がどこにあると?
「金で動く男ではないと思った。だったらどうすればポスターを作ってくれるのかと尋ねたら、特技を聞かれてパソコンと答えたんだ。すると……あるホテル王のところでじいさんにパソコンを教えることになって」
「は、はぁ……」
朱羽は疲れたような顔で続けた。
「それ自体はそんなに大変ではなかったんだけれど、ちょうどそのじいさんがいるフロアの事務員のパソコンがウィルスにかかって。それをなんとかしていたら、ネットワーク経由でホテルのシステムに支障が出ていると言われて。そこからぼろぼろとセキュリティとかの脆弱性が見付かって。はっきり言えば、何十年前のシステムなんだよという時代遅れのもの。それを、いくら説明してもあのじいさんがわかってくれなくて、何度も何度も根気強く説明する羽目になって」
朱羽はなんだか泣きそうだ。