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癒らし屋日記 #葵さん
第2章 その、馴れ初め
彼女を心から欲しいと思った。
一度でもいいから、抱ければと思った。
正直こういうことを書くのは恥ずかしいけれど、その彼に嫉妬して、自信をなくしていた。
だからこそ、彼女の心に刻み込ませるようなセックスにしたかった。
ソレハマタズイブンナシツモンネ。
ここで彼女が怒って帰ってしまっても致し方ないと思った。
もしそうなら、それが運命。
これまでのことは夢だったんだと思ってしまおう———。
一瞬でいろんなことを考えていた。
「あのね、」ぼくは口を開いた。「入れなくても、ずっと葵さんのこと、感じさせてあげたい。特別にフェチなやりかたで、長い時間をかけて愉しませてあげたい」
彼女は何も答えなかった。
かわりに眉を上げて、すこしおどけた顔をして、話の先を促してくれた。
「たとえば、」彼女の耳に、口を寄せて、低い声で話した。「フェラチオしてあげたい」
?、という顔の彼女。
「椅子に座った葵さんの前にひざまずいて、パンプスを脱がして、脚を捧げ持って、あなたの脚の親指に、そっとキスしたい。爪先に舌を這わして、ゆっくり頬張りたい…」
恥ずかしかった。本当に。
でも、彼女には、そういう傾向がある、と直感していた。
彼女はテーブルのコーヒーカップを両手で包んだまま、何も言わなかった。
耳元の口を少しだけ離して、声を低めて先を続ける。