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サキュバスちゃんの純情《長編》
第4章 過日の果実

 部屋で準備してもらった和朝食を食べ、支度をしてから旅館を出る。今日も同じところに泊まるので、荷物はそのままだ。
 今日も暑くなると言っていた通り、快晴。むぎ……ハットをかぶり直す。

「バスの時間を見て、すぐ来そうだったらバスで行くよ。来ないなら、タクシーで行こう」

 幸いにもバスは五分後くらいに来たので、青色のかわいらしい観光バスに乗り込む。二人掛けの席に座って、先生を見つめると、少し緊張しているようだ。真面目な顔をして真っ直ぐ前を向いている。

「……高校生のときに、社会科見学で箱根に来たんだ」
「へえ。水森さんも?」
「ああ。水森と仲良くなったのは、そのときからだな」

 へえ。箱根は湯川先生と水森さんの思い出の地ということか。
 でも、たぶん、そんな男同士の友情の話をするためにここへ私を連れてきたわけではないだろう。
 青色のバスは観光客を乗せて山を行く。緑の葉っぱが揺れる山道を結構な速度で進んでいく。

「降りるよ」

 先生が降りるよう促したのは、とある美術館の前のバス停。緑の木々のトンネルの向こうに、ガラス張りの正面口が見える。

「出入り口が二階にあって、展示は地下にあるんだ」

 先生がそう説明してくれた通り、美術館の姿は眼下に現れた。ガラス張りのエントランスは見た目には涼しげだけど、近づくと結構暑い。
 一階へ降りて、汗だくになる前に素早くチケットを購入する。そして、展示のある地下へとエスカレーターで向かう。

「涼しいねぇ!」
「……うん」

 先生のテンションが低い。入館時にもらったはずの館内マップも私に見せてくれないので、仕方なく展示室へと入る。
 かわいらしい化粧箱や香水の瓶、セザンヌ、モネ、ルノワール、ドガ……有名な画家の絵が並ぶ。先生は展示室の入り口の近くに立ったまま、動こうとしない。

 私は説明文を読みながらゆっくり展示品を見る。昨日の美術館ではゆっくり見られなかったから、とても嬉しい。また昨日の美術館にもいつか行ってみたい。きちんとぜんぶ見てみたい。

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