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サキュバスちゃんの純情《長編》
第5章 恋よ来い

「健吾くん、夕飯食べるー?」
翔吾くんの部屋からリビングダイニングを挟んで向かい側が健吾くんの部屋だ。扉の向こうから、小さく「食べる」と声がしたので、健吾くんの食器を準備する。
男二人が暮らす部屋の冷蔵庫の中に、食材はないものと思っていたけど、意外と野菜も肉も揃っていた。健吾くんが結構料理をするみたい。調味料もきちんとあったので、二人が勉強をしている間にパパッと作ったのだ。
翔吾くんがテーブルをセットしてくれるので、私は三人分のご飯をよそうだけ。カウンターに料理を並べながら、翔吾くんに配膳を任せる。
「……和食?」
寝起きみたいな顔で、健吾くんが部屋から出てくる。だいぶ疲れているみたいだ。翔吾くんもだけど、試験勉強は大変だなぁと苦笑する。
「健吾くんはイタリアンをよく作るって翔吾くんに聞いたから、和食にしたよ。冷蔵庫の中身、勝手に使ってごめんね」
「……いいよ、別に。また買ってくるだけだし」
「じゃあ、配膳手伝って」
先日のことが気まずいのか、健吾くんは私と目を合わせようとしない。今日はわかりやすいなぁ。
「わぁ、美味しそう!」
「見た目は、な」
「二人とも、食べてから絶賛してください」
四人がけのダイニングテーブルの、翔吾くんの隣に座って、手を合わせる。三人で「いただきます」をしてから、五目ご飯から食べ始める。
「あかり、美味しい!」
「まあまあだな」
たぶん健吾くんの最大限の賛辞なのだろうと受け取って、和食が大好きで「美味しい」を連呼するかわいいセフレくんを見る……あ、すぐおかわりが必要そうですね。
「ご飯と味噌汁はまだ余ってるから」
「おかわり!」
「はいはい」
「あ、俺も」
「……おかずも食べなさい、君たち」

