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サキュバスちゃんの純情《長編》
第5章 恋よ来い

しかし、五目ご飯を持ってきたときには、もう味噌汁も少なくなり、サケの塩焼きはなくなり、ほうれん草のおひたしは残ったまま、だし巻き卵の争奪戦が繰り広げられていた。
二十歳のいい男が、子どもみたいに「これは俺のだ」「いや、俺のだ」と言い争っているのは、本当におかしい。面白い。放っておくと兄弟喧嘩になりそうだ。
「だし巻き、私のあげるから」
「じゃあ、俺がもらう! これ、美味しいね」
「でしょー? 昔、教えてもらったんだ」
「セフレに?」
健吾くんの問いに、翔吾くんの動きが止まる。私は努めて明るい声で、「さぁ、どうでしょうね」と笑う。
セフレではなく、以前働いていた料亭の板長だった人だけど。永田さん、もう自分のお店、持てたかな。それが夢だって言っていたから。
「……健吾」
隣から、怒りを含む冷たい声が聞こえた。怖くて横を向くことができない。ふだん温厚な人が怒ると、めちゃくちゃ怖いからだ。
「あかりに失礼なこと言わないで」
「失礼? 事実だろ。翔吾だってオトモダチの一人なんだろ」
「お前には関係ないだろ」
「関係あるだろ」
健吾くん、自分から「うちに来てもいい」と言いながら、一体何にイライラしているの?
私は二人の顔を見比べながら、「私のために争わないで」というセリフを思い出す。まさに、今、使うべきではないだろうか。
「昼間っからイチャイチャして、見せつけてんの? 彼女のいない俺に見せつけてんの? 風呂場の声、丸聞こえなんだよ!」
「……」
「……」
それは、大変申し訳ありませんでした、と翔吾くんも思ったらしい。一緒にお風呂に入って、また、お互いにも挿入りました。すみません。

