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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花

「先日はご心配をおかけいたしまして……」
「あ、うん、大丈夫だったなら、いいんだ。俺ももっと早くに気づけたら良かったんだけど」
「いえいえ、十分でした」

 そう、十分だ。
 荒木さんが私を気にかけてくれていたということがわかっただけでも、十分嬉しい。

「あれ、佐々木さん今日休み? 珍しいね」
「はい、そうなんです。もし佐々木先輩に頼んでいる仕事で今日必要なものがあれば、私に回してください」
「うん、わかった。ちょっと確認してみるね」

 それぞれデスクのパソコンに向かう。

 先日佐々木先輩が見せてくれた息子さんの写真は、めちゃくちゃかわいらしかった。佐々木先輩はめちゃくちゃデレデレしていた。あれこそ、母の顔。
 そんな、溺愛している息子さんが熱を出したなら、さぞかし心配だろう。ついていてあげてほしい。

 子どもが熱を出したので休みます、なんて今までなかった。それだけ、周囲に気を遣って、二人分の体調管理をしていたのだから、やっぱり先輩を責める気持ちにはならない。
 他の派遣さんはそうではないのかもしれないけど、私だけは佐々木先輩の味方でいよう。

 子どもが産めない私には、きっと母性なんてないんだろうけど……小さな子どもはかわいいし、頑張って育てている人にはただ敬意を抱くだけ。

 ただ、少しだけ、うらやましいと思うだけだ。

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