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サキュバスちゃんの純情《長編》
第6章 花火と火花

 日向さんを見送ったあと、私の職場――営業部へ向かう。ちらほらいる営業部社員と派遣さんの中に、佐々木先輩の姿はない。いつもならとっくに仕事を始めているはずなのに。
 荒木さんもまだ来ていないみたいだ。

「佐々木先輩はまだ来ていないんですか?」

 他の派遣さんに尋ねてみると、「今日は忙しいのにお休みだって」と冷たい言葉が返ってきた。

「子どもが熱出したから来られないなんて、どういう体調の管理をしているのかしら。いい迷惑よ」

 そうブツクサ言っているけど、佐々木先輩がいないと彼女は適当な資料を作ってしまうのだから、仕方ない。佐々木先輩の仕事量は私たちより遥かに多いので、彼女が欠けると大変だ。
 ……今日は残業かな。心配だから、昼休憩にメッセージを送っておこう。

 パソコンを起動して、ログインして。さぁ今日も一日元気に働こう、と伸びをした瞬間に、暖かく柔らかい何かに当たる。

「……月野さん、おはよう」
「あっ、荒木さん……! すみません、殴っちゃいました!?」
「大丈夫だよ。優しいパンチだったから」
「すみませんっ!」

 伸びをした拳が荒木さんの頬にヒットしてしまったらしく、頬を押さえながら笑う荒木さんにきゅんとする。

 日向さんはああ言ったけど、角が立たないようにすぐにイトイの人事部の人に知らせてくれたのは彼だ。
 妹尾さんやその先輩に絡まれているところをどれだけ静観していたのかはわからないけれど、助け舟を出してくれたことに変わりはない。
 それはとてもありがたいことだ。

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