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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携
『私の妻にならないか』
なりません。
『笑ってくれないか』
笑いません。あなたの前では。
『もう、泣かないでくれ』
だって、叡心先生が。夫が。
『子どもが作れないなら、養子をもらえばいい。だから、私の妻になってほしい』
なりません、絶対に。夫を裏切りたくないの。
『……叡心から、あなたのことを頼まれているんだ』
嘘をつかないで。
夫は、あなたにだけは、私を託すことはしない。
酷い嘘をつかないで。
『本当のことなんだ。叡心の遺言を守らせてくれ』
嘘よ。嘘。私は騙されない。
『あなたを守りたい。そばにいて欲しい』
どうか早く、私を手放して。開放して。お願い。
あなたから離れられるなら、あなたに抱かれる日々だって受け入れるから。
『ミチさん』
『あなたと一緒に生きることが、叡心への贖いとなるんだ』
『ミチさん、返事を。応えてくれないか』
『あなたを慕う男は、ここにもいる』
『ここに、いるんだ――』