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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

「え、十年前に健吾を助けたのって、あかりだったの?」
「そうみたい。私も忘れてたんだけど」
「じゃあ、健吾は初恋の人に童貞を捧げたわけ? 何それ、ちょー羨ましいんだけど」

 ベッドの中、裸で抱き合いながら近況を報告し合う。
 ベッドでイカされて、お風呂でまたセックスをして、簡単な昼食を食べたあと、冷房の効いた客室で抱き合って過ごす。何とも贅沢な時間だ。

 翔吾くんは日に焼けた。今まで白かった胸のあたりも背中も、既にこんがりと焼けている。サーフィンをして、友人たちとサッカーをして、楽しんだようだ。
 今回、軽井沢には友人たちは呼んでいない。二人きりだということだ。

「初恋の人かは聞いてないけど、不思議なめぐり合わせだねぇ」
「そうだね。あー、でも、羨ましいなぁ」
「翔吾くんも初めては好きな人としたんじゃないの?」

 翔吾くんは渋い顔をして唸る。
 あれ、違ったの、かな?

「んー……まぁ、好奇心だよね。好きという感情よりは、性欲しかなかった気がする」
「そっか」
「あかりは? 最初からセフレが欲しかったわけじゃないでしょ?」

 最初……最初、かぁ。
 最初は、いつだっただろうか。
 空腹のあまり行き倒れていたところを、娼婦のお姉さんに助けられて、客の取り方やらを教えてもらって――初めてついた客が「初めて」だった気がする。それより前の記憶はない。処女だったのかどうかもわからないのだ。

 翔吾くんが「性欲」なら、私は「生欲」が原動力だ。
 生きるために、セックスをして、精液を確保する。そういう生き方しかできない。

「仕方なく、かなぁ」
「仕方なく!? そんな理由で初めてを迎えたわけ? 女の子なら、もうちょっと、こう、ロマンチックな……あぁ、もう!」

 ぎゅむ、と強く抱きしめられて、翔吾くんの腕の中に閉じ込められる。相変わらず、爽やかないい匂い。香水なんかつけなくても、私は翔吾くんの匂いは好きなんだけどな。

「あかりの初めての相手が俺だったら良かったのに! そしたら、仕方なく、なんて感想にはさせなかったのに!」
「ふふ。ありがと」

 翔吾くんが初めての人なら、確かに優しくしてくれただろうなぁ、なんて思う。翔吾くんが百年近く前に生まれてくれていたら、だけど。

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