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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

 おそろいのTシャツを着て、ログハウスのような外観のレストランで夕食を食べたあと、明日からの食材を大きめのスーパーに買いに出かけた。
 軽井沢らしく高級食材も扱っており、その品揃えには驚いたけど、翔吾くんが値段も量も見ずに「これ欲しい」とカートに入れていくのにも驚いた。

「食べ切れないよ!」
「食べられなかったら捨てればいいよ」
「……ダメ。もったいないから持って帰るよ」

 このあたりの感覚は、たぶん、相容れられないものだと思う。お金持ちと貧乏人の価値観の違い、というものだろうか。
 翔吾くんには、もったいないと感じる心が欠落しているんだろう。お金持ちには、なのかもしれないけど。
 ……まぁ、翔吾くんが支払ってくれたのだから、私がとやかく言うことではないのかもしれない。スーパーであんな金額、初めて見た。目玉が飛び出るかと思った。

「あかりはテニスしたことある?」
「少しだけなら」
「じゃあ、明日はテニスしようか」

 森林浴をしながら散歩、は計画されていなかったらしい。
「ウェアは用意してあるから」と翔吾くんが運転しながら微笑む。その横顔が楽しそうだから、私は頷くしかない。
 別荘に着いて、車から降りた瞬間に、違和感。リビングに、電気が、点いている。出てくるとき、点けたままだっただろうか。

「翔吾くん、電気点けたままだった?」
「いや……あぁ、来たんでしょ」
「え、友達?」
「まさか」

 袋を持つのを手伝いながら、「まさか」と思う。まさか、ご両親ではないだろうし……まさか。
 まさか、ねぇ。

 玄関がカラリと開いて、人が出てくる。逆光で見えづらいけど、そのシルエットは。その声は。

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