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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

「住むところはどうする? もう一人の相手とあかりをシェアするなら、交代制にするか、一緒に住むかしないといけないけど」
「翔吾くん、ちょっと待って。私の頭が追いつかないよ!」
「そうだね。大事なことだから、ゆっくり考えればいいか。俺は今すぐにでも一緒に暮らしたいけど、もう一人の意見もあるし、あかりの生活もあるし」

 頷いて、翔吾くんは勝手に納得する。この思考力は、一体どこから来るものなのか。八ヶ月、ずっと考えていたとでも言うのだろうか。

「あかり、返事聞いてない」
「え?」
「俺と付き合ってください」

 付き合う……付き合う……のは、実は初めてだ。夫婦になったのは、叡心先生が最初で最後だけれど、叡心先生とは付き合ってはいない。夫婦になる前は娼婦と客の関係だった。
 恋人は、翔吾くんが、初めてなのだ。

「あかり、真っ赤」
「だっ、て」
「好きだよ、あかり。俺の彼女になって」

 翔吾くんの顔を見ないように、ぎゅうと首筋に抱きついて、私はただ一言を、彼に告げる。

「……よろしく、お願いします」

 百年生きてきた私の、初めての、一歩だった。
 セフレから、恋人に。
 この恋の結末はわからないけれど、間違いなく、それは大きな大きな、一歩だったのだ。

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