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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

 ボクサーパンツに足を通しながら、翔吾くんは何度も「最悪だ」と呟く。

「ご両親?」
「俺と健吾の。母親の実家が金沢にあるんだ。新幹線で二時間くらい。健吾が早めに教えてくれていたのに、スマホ見てなくて」
「あ、じゃあ、挨拶してくるよ。お待たせするのも悪いし。コーヒーでいいかな?」

 パパッと洗顔をして、髪を整え、ワンピースを着て、完成。すっぴんはマズいからルースパウダーだけ。念入りに化粧をしている時間はない。

「え、イヤじゃない? もう少しあとで紹介する予定だったのに」
「イヤじゃないよ? だって、二人の両親でしょ?」

 姿見で一応全体を確認して、及第点を与える。まあまあ、だ。清楚なお嬢さん……に、見えないこともない。
 部屋から出ていこうとしたら、背後から翔吾くんに抱きすくめられた。

「翔吾くん?」
「ごめんね、あかり。ちゃんと彼女だって……紹介してもいい?」
「いいよ。話は合わせるから」
「うん、ありがと」

 だから、翔吾くん。
 動揺していないで、早く服を着て、ね。

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