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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

「私、あかりちゃんが翔吾のお嫁さんになってくれるなら嬉しいわ。毎日ご飯食べに行ってもいいかしら?」
「ダメ。あかりは家政婦じゃないから」
「え、私は構わないけど」
「ダメ。絶対にイヤ。親が入り浸る家には帰りたくない」

 翔吾くんにとっては、そういうもの、なんだろう。邪魔されたくないんだなぁ。私は別に気にしないのに。

「とにかく、私たちは結婚には反対しないわよ。いつでも、好きなように、好きな相手としてちょうだい」
「あ……あの、私、子どもが」
「え、もうデキちゃったの?」
「いえ、逆です。子どもができないんです」

 子どもができないどころか、そもそも入籍はしないし、歳も取らないし、他にも夫やセフレを作るかもしれないし、もしかしたらいきなり失踪するかもしれないのですが……なんてカミングアウトはできない。どう考えても、私は結婚には向かない女だし、反対されるに決まっている。

「子どもがいない夫婦なんていくらでもいるじゃない。別に構わないんじゃない?」

 あっけらかんとしているのはお母様。お父様は「そうか……」と呟き少し寂しそうな顔をする。す、すみません。お父様はお孫さん欲しかったようですね。

「まぁ、どういう事情があろうと、結局は息子を幸せにさえしてくれたら、それでいいの。ね、あなた?」
「……そうだな。翔吾さえ良ければ」
「何年先かわからないけど、あなたが私の娘になってくれるなら、私も幸せよ」
「胃袋がね……いたたたた」

 お母様は無言でお父様の頬をつねり上げる。なるほど、私はお母様の胃袋を掴むことができたようだ。あれだけ喜んで、きれいに食べてくれるなら、たまにはお母様に作ってあげるのもいいかもしれない。

 ……なんて、トントン拍子に話が進むのが、何となく恐ろしい。これで本当にいいのか、悪いのか、私にはわからない。さっぱりわからない。

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