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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

「まぁ、色々決まったら、また報告するよ」
「ええ、そうしてちょうだい。桜井にも沖野にも話をしておかなくちゃいけないからね」

 ……沖野?
 石川県金沢市の、沖野?

「あの、沖野というのは、お母様の旧姓ですか?」
「ええ、そうよ。元は地主だったのだけど、祖父がやたら商売が上手で、戦後起ち上げた会社を大きくしてねぇ」

 沖野……まさか?

「目が見えなくて戦争に行かなくて済んだ分、地域と国に貢献するんだと言っていたそうよ」

 ……あぁ、やっぱり。

『目が見えなくてもわかる。情勢は悪化している。戦争には、負けてしまうだろう』
『そのとき、蔵にある米でどれだけの民を救うことができるだろうか』

 何の因果か……本当に、不思議な縁だ。
 私、どうやら、あなたの曾孫たちにも抱かれたみたいですよ、坊っちゃん……いえ、旭さん。
 翔吾くんはお茶を飲みながら、「その昔話は何度も聞いたよ」と苦笑している。旭さんの面影は、お母様にも翔吾くんにも見ることはできない、けれど。

 そっか……旭さん、生きて、血を繋ぐことができたんだ……良かった。
 良かったなぁ。
 戦時中にお世話になった人を想いつつ、その人の曾孫にも出会って同じように精液を提供してもらっているという世間の狭さに、驚愕するしかない私だった。

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