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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

「あっという間だったねぇ、夏休み」

 レンタカーを返し終わって、二人で新幹線を待つ。ホームはジリジリと暑い。セミは相変わらず大合唱。
 今年の夏は、ストローハットがよく役に立った。湯川先生、ありがとう。素敵なお土産でした。

 双子の両親は、別荘に一泊して早朝に出て行った。翔吾くんは寝ていたけれど、私は挨拶をすることができた。

「翔吾と健吾をよろしくね」とお母様に念を押されたけれど、そこに健吾くんが含まれているあたり、お母様だけは私たちの関係に気づいているのかもしれない。
 昨夜の夕飯時に、しきりに「健吾もどことなく丸くなった気がするのよねぇ」と私を笑顔で見つめてきていたから。私の笑顔が引きつっていないといいんだけど、それは自信がない。

「俺はまだ夏休みだけど」

 学生である翔吾くんが得意げに笑う。帰ったら、何日か大学サッカー部の合宿があるそうだ。また日に焼けるのだろうか。

「あかり、もう一人にはいつ話す?」
「んー、今週末か来週、かな。忙しい人だから、予定聞かなくちゃ」

 湯川先生から連絡はない。ということは、忙しいということだ。手術なのか、学会なのか、私にはわからないけれど。
 まぁ、少し、寂しい。

「何してる人?」
「……お医者さん」
「医者!? マジかー……あ、でも、よく考えたら、俺も医者と同レベルってことか! なら、いっか!」

 よくわからない思考だけど、納得できたなら、いいか。苦笑しながら、青と金色が特徴の新幹線がホームに入ってくるのを見る。

 反対側に行けば、旭さんと過ごした金沢なのか。そう思うと、何だか不思議。いや、旭さんの曾孫と手を繋いでいることのほうが不思議なのかもしれない。
 本当に、変な巡り合わせ。

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