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サキュバスちゃんの純情《長編》
第1章 情事と事情
「海にも山にも別荘があるから、あかりの好きなほうに行こう」
「んー、どっちでもいいよ」
さすがお金持ち。別荘なんて単語がさらりと出てくるなんて。
「軽井沢と湘南、どっちがいい? 健吾は軽井沢には行きたがらないから、そっちのほうが家族にはバレなくて安全かな」
「何で軽井沢に行きたがらないの?」
昔のことだよ、と翔吾くんは笑う。
「十年くらい前に別荘の近くの川で溺れたんだ、健吾。で、助けてくれた女の人に一目惚れしたんだけど、その人、議員の愛人だったんだよね」
「へぇ……」
「一人で議員の別荘に御礼をしに行って、震えながら帰ってきたよ。トラウマになるようなものを見たらしいけど、議員と愛人がヤッているところでも見たんじゃないかな」
「……うわぁ」
「それきり、女が苦手なんだ。だから、健吾から嫌なこと言われたら、俺に教えてね」
一目惚れした相手、かぁ。十年前ってことは、十歳くらい? 性に目覚めていない時期に他人のセックスなんて見てしまったなら、確かにトラウマものだなぁ。
「十年前の軽井沢……」
一瞬、何かが引っかかったような気がしたけれど、ぐぐぅと鳴った翔吾くんのお腹の音で思わず笑ってしまった。
「お腹すいた! 何か食べに行こう?」
私は満腹だよ、とは言えずに笑って真新しいブラとショーツを手にする。
また甘いもの食べたいなぁなんて言ったら、きっと笑われるに違いない。でも、翔吾くんは笑いながらも美味しいデザートがある店を選んでくれる。
そういうところは、本当に好きなのだ。
もちろん、セックスフレンドとして。