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サキュバスちゃんの純情《長編》
第9章 記憶と記録

会いたい。
ひと目でいいから、ミチさんに会いたい。
色に狂う、ということがこんなにもつらく苦しいものであったとは、知らなかった。
叡心もそうだったのか。
叡心は楽になれたのか。
叡心は、苦しみから解き放たれたのか。
私も、もう、疲れた。
疲れてしまった。
嵐が来る。
終わりにしようと思う。
決して私のものにはならない女を想い、苦しむだけの毎日は、終わりにしよう。
叡心が死んだ日に嵐が来る。
つまりは、そういうことだ。
身辺の整理はしておいた。
秀にも子どもたちにも迷惑をかけるが、仕方がない。十分な金は遺せたはずだ。
不甲斐ない夫を、父を、許してくれとは言わない。理解して欲しいとも言わない。
憎むなら憎んで、生きて欲しい。
生きて幸せになって欲しい。
叡心も、そう思ったのだろう。
そうだろう。
ミチさんに、生きて幸せになって欲しかったんだろう。
すまない。
その役目は、果たせなかった。
私ももうじき、そちらへ行く。
そして、絵を描いてくれ。
その絵を、また、買い取らせてくれ。
私は、叡心の絵を、心から、
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