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サキュバスちゃんの純情《長編》
第9章 記憶と記録

 あれから秀がミチさんについて尋ねてくることはない。しかし、私が娼妓と遊んでいるのではないかと疑ってはいるようだ。夜出歩くことはしばらくやめておこう。


 アサが死んだ。
 苦しみ、醜くなって、死んだ。
 街娼の、娼妓の、末路だ。
 ミチさんも、病気を貰えばああなっていたのかもしれない。


 叡心が身を投げた船着き場でぼんやり過ごす。
 嵐が来るたびに叡心のことを考える。
 なぜ、叡心は妻と一緒に死ななかったのか。心中しなかったのか。
 叡心は、なぜ、私にミチさんを託したのか。
 ミチさんは、叡心と一緒に死にたかっただろう。後を追いたかったはずだ。
 二人の仲に割って入ったのは私だが、結局のところ、二人の仲を完全には断てなかった。
 叡心は、なぜ、ミチさんを遺したのか。
 遺されたミチさんが苦しむとわかっていたはずなのに、なぜ。
 なぜなのか。答えはわからない。


 叡心の遺作を見ていて気づいたのだが、ミチさんの体は若々しく美しく描かれている。表情も昔と変わらず美しい。
 しかし、叡心の手は、皺だらけで、しみも広がり、全体的に薄汚れた印象だ。
 叡心は、老いていく自分に恐れたのかもしれない。若く美しい妻を、一緒には連れていけないと思ったのかもしれない。
 だから、自分よりは若い私に、ミチさんを託した。そう考えると、腑に落ちる。
 それでも、ミチさんの心が私に向くことはなかったが。

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