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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白
お粥やスープを温め直して、湯川先生に食べてもらう。「美味しい、美味しい」と笑う先生の顔色は悪くない。快方に向かっているようで安心した。
「久しぶりに家庭料理を食べた気がするよ」
「自炊しないでしょ?」
「うん、あんまり、ね」
鍋もフライパンも調理器具も、高価そうなものがそろっているのに、あまり使われた形跡がなかったのはそのせいか。冷蔵庫の中の調味料も、大半が消費期限を過ぎていた。
もったいないなぁ。いいキッチンがあるのに、あれは飾りか。もったいない。
「ここ最近、神経を使う手術ばかりで疲れていたのかな……合間におにぎりとか菓子パンしか食べていなかったし」
「医者って大変なんだね。風邪引いて当たり前だよ、そんな生活じゃあ」
「あかりが毎日『好き』って言ってくれたら頑張れるよ」
洗い物をしながら「好きだよ」と言ってみる。湯川先生は照れたのか、顔を赤くする。リクエストしたのは先生なのに。
「毎日言ってほしい?」
「できれば、ね」
「じゃあ、そうする」
「……俺、幸せすぎて死にそう」
幸せすぎて死んだ人なんていないでしょ、と笑いながらタオルで手を拭く。
そして、椅子に座ったままの先生に抱きついて、キスをして、「好き」の雨を降らしてみる。先生は真っ赤になりながら、微笑む。
……やりすぎると、確かに心臓には悪いのかもしれない。先生の心臓はめちゃくちゃドキドキしているから。
もしかしたら、幸せすぎて死ぬ人もいるのかもしれない。聞いたことはないけれど、私が知らないだけで。
「……あー、ダメ、押し倒したくなる」
「ご飯食べたばかりだから、やめておこうね」
笑いながら、ソファに移動する。ベージュの柔らかい素材のソファは、座ると深々とお尻が沈む。気持ちがいい。
隣に座り、キスをする。ムラムラする気持ちは抑えながら、しばらくお互いの唇の感触を楽しむ。
これ以上すると止められなくなる、というギリギリのところで、おしまい。続きはベッドで、だ。