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サキュバスちゃんの純情《長編》
第11章 幸福な降伏

「なるほど。翔吾は同居したい派ね」
「望さんだって、週末婚は寂しいでしょ? できれば毎日あかりの顔を見たいじゃん」
「確かに。じゃあ、俺が部屋を用意するから、翔吾はあとから引っ越してくる、と。物件は一緒に見に行くか?」
「できれば行きたいけど、六畳一間の俺の部屋さえあれば文句は言わないよ。フローリングなら嬉しい」

 なんか、ものすごい勢いでいろいろ決まっていっているような気がするのに、当事者の私だけ、蚊帳の外なんだけど。ものすごい疎外感だ。

「結婚式はしたいけど、家族と親戚だけ呼ぶか、写真だけ撮るか、ちょっと悩んでいてさぁ。翔吾はどうしたい?」
「俺は式を家族だけでやりたいかな。披露宴はしないよ。だから、リゾートウエディングでもいいかなって」
「ちょっと待って!」

 話を遮られて、二人は不審そうに私を見つめる。気持ちはわかる。よぉぉーくわかるけれども!

「……結婚式、するの?」
「あかりはしたくないの?」
「ドレスとか、着たくないの?」
「あかりが嫌なら写真だけでもいいけど」
「んー、やっぱ、実際にやったほうがいいと思うけどなぁ」

 二人は「やりたい」と結論を出す。
 それは、結婚式を二回するということ、ですよね? 二回も? 本当に二回も? 私が花嫁で?

「俺は神社でやりたいなぁ。神前がいい」
「あ、俺はチャペル希望。望さんは和装、俺はドレス。かぶらなくていいね」
「お、いいな。ドレス姿のあかりもかわいいと思うけど、白無垢姿も見てみたいな」
「色打掛もいいじゃん?」
「いいねぇ!」

 男二人で盛り上がらないでほしいんだけど、なんていうか、好きな人同士が仲良くしてくれているのは嬉しい。おかしな状況に変わりはないのだけれど、ここは素直に喜んでおいたほうがいいのだろうか。
 いやいや、おかしなほうへ流れているのであれば、流れを直さなければ。
 直すべきだよね? その役目は私にしかできないことだよね?

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